遺伝子分析 メタボロームによる未来の治療に期待‼︎
2015.05.26
生体内のすべての代謝産物メタボライト(metabolite=脂質、たんぱく質、ホルモン、
酵素、など生体内の物質)を総称してメタボローム(metabolome)という。
-omeは総称するときに使う単語で、例えばゲノム(genome)は遺伝子geneの総称だ。
ちなみに、一般的に使われている「メタボ(代謝異常症群)」はこのメタボロームの
1部である脂質代謝の異常や血圧上昇などの動脈硬化を生じる危険因子が集合した
状態を指している。
さて、このメタボロームだが、近年の様々な分析機器の改良や発明、統計解析法の発達
などにより異常なメタボロームをより選択的にかつ正確に調べることが可能になった。
その応用例の1つに新薬の開発がある。
新薬は動物に服用させて安全を十分に確かめた後、直接人に投与してさらに安全性を
確かめた上で発売されるが、それでも発売後、思いがけない副作用が生じることがある。
これは個人の薬物反応に違いがあることなどによる。
メタボロミクス解析を応用すると、薬剤の体内での代謝後の変化がわかるため、
それによる生体反応が予測可能となり、より安全な薬剤開発への応用が期待されている。
また、新薬開発以外の応用例に代表的皮膚科疾患であるアトピー性皮膚炎の研究がある。
アトピー性皮膚炎は皮膚のバリア障害が大きな原因と言われており、例えば重要な
構成物である脂質について実際の病気の人と健康な人との比較研究に応用され、
脂質の長さに大きな違いのあることが判明した。
これまでの研究方法ではとらえることができなかったことだ。
このようにメタボローム(代謝産物)のダイナミズムな解析は、様々な可能性を
秘めており、将来のより確実な治療が期待できるといえよう。
筆者も大いに注目したい分野の1つだ。
伊藤 院長 2015年5月26日(火)記
カテゴリー:皮膚科・研究と回想