気をつけたい「風邪と抗生物質」の扱い

気をつけたい「風邪と抗生物質」の扱い

2014.05.29

最近の外来の特徴として、喉の痛みを訴える風邪をひいたビジネスパーソンが多い。

対症療法で内服薬を処方するのだが、なかには「抗生物質」を希望される方がおられる。

 

確かに「感染」という見地にたてばウイルス性疾患も細菌性疾患も同じように

見えてしまうのかもしれない。または、子供の頃の溶連菌感染症の影響かもしれない。

しかし、風邪のほとんどはウィルス性であって細菌性ではない。

したがって、抗生物質は効果が無いため、説明した上で処方しないようにしてる。

 

というのも、適応ではない「抗生物質」を安易に投与すれば耐性菌が増え、

いざという時に抗生物質が効かなくなるというリスクが高まるからだ。

 

先月末、WHOから衝撃的なレポートが報告された。

耐性菌が世界で拡大しているというのだ。

以前からMRSAやVREといった耐性菌は知られていたが、なんとか他の「抗生物質」で

しのいできた。

しかし、今回カルバペネムという最後の切り札とも言うべき「抗生物質」が効かない

肺炎桿菌が世界的に広がっている事が判明し、危機的状況と言われている。

 

細菌には薬剤耐性遺伝子を偶然獲得するものがわずかだが存在する。

通常は「抗生物質」を使用すると大多数の細菌は反応して死滅する。

けれども頻回に「抗生物質」が使われると、この遺伝子を持った菌のみが

生き延び、増殖した耐性菌が大多数を占めるようになる。

 

この状況をさらに悪化させないためには「抗生物質」のより適正な使用が

重要だ(とWHOも言っている)。

このため、ビジネスパーソンから「抗生物質」の希望があっても不要と思われる時は

お断りしている。

 

placebo(偽薬)効果は否定しないけれども、「抗生物質」を使うと風邪が早く治る

と勘違いされているビジネスパーソンには大変申し訳ないが、以上のような理由で、

これ以上耐性菌を増やさないためにも「抗生物質」は適正に扱いたいと思っている。

 

 




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