イギリスと研究⑶
2013.10.11
10/11(金)イギリスと研究⑶
前回は地中海沿岸とアフリカでみられる程度の症例であったカポジ肉腫が、
1980年代初期になって突然ニューヨークやカリフォルニアでホモセクシュアル間に
多発したことによって「ウィルス」に関係する「腫瘍」の存在が認められたことを
書いた。
その後分子生物学手法を用いて腫瘍組織からウイルスを限定する研究がなされたのは、
それから10年以上経過した1993年であった。
驚いたことに、限定されたウイルスは我々の身近に存在する「ヒトヘルペスウィルス」
であることが明らかになった。
即ち口唇ヘルペスや水疱瘡を起こすウィルス、7つのヘルペスウィルスの仲間である。
この 限定されたウィルスは、 感染力も弱くきわめて控えめに増殖する。
それでいて少し増えると免疫系の攻撃を避けるかのように隠れてしまうという
他のヘルペスウィルス以上の巧みさを持っていた。
ちなみに7つのヒトヘルペスウィルスは成人の少なくとも7、8割に潜在的に感染
しているが、この限定されたヘルペスウィルスはおそらく日本人では人口の1%ほどに
しか感染していないと思われる。
もっとも感染率が高いのはアフリカの特定の地域の住民であろう。
日本人のホモセクシャルの間でも後年生じたが、もっと昔から特定の地域の住民が
持っていたと思われる。
なぜ日本人やアメリカ等のホモセクシャルに感染したのかについては、壮大な話になるた
め、次の機会に書くことにして、「腫瘍」と「ウイルス」を結びつけたカポジ肉腫の話は
とりあえず一旦終了する。
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カテゴリ: 研究と回想